『秘蔵宝鑰』(ひぞうほうやく)は真言密教の中心思想である(十住心)を説き明かしたものですが、お大師さまは、菩提心の発展を十の段階に分けて説いていらっしゃいます。
◎ このご文は家庭生活への反省のお言葉です。
親子はお互いに親しそうに見えているけれども、果たして本当の親子の深い縁を知っているでしょうか ? 夫婦はお互いに愛し合っているように見えますが、本当の慈愛によって結ばれているでしょうか ?
最近は親子の断絶は多くの家庭の問題になっていますが、これは青少年を持つ事ばかりにとらわれていますが、もっと深刻なのは、成人した子と年老いた親との問題なのです。これは社会問題でもあるのですが、都合の良い時だけ親子であり、親に経済力がなくなると見放してしまう例が増えているそうです。老人ホームの入居者の半分は子供のいる老人だそうです。親を親とも思わない子供にも問題があるのですが親の子育て、教育、躾けがいかに大切か思い知らされます。
一方、愛し合って結ばれた夫婦が、お互いに我をはり、思いやりを忘れ、忍耐せずに離別に到る例も増えています。悲しい事です。
それらは流水が相次いで流れ去り、火焔が次から次えと燃えては消え去るのに似ていると、お大師さまはおっしゃっているのです。
親子も夫婦もともに我に惑わされ妄想に流される事無く、真実の人間生活を見極めて、その深い因縁を覚らなければなりません。
南無大師遍照金剛