人生は四苦八苦だといいます。四苦八苦とは、肉体の苦しみが四つと心の苦しみが四つであり、合わせて八苦となるそうです。
肉体の四苦とは「生老病死」と言って生まれる苦しみ、老いる苦しみ病気になる苦しみ、死ぬ苦しみの事です。その内の「病気」ですが四百四病と言われるほど種類が多く、どの病気にかかっても嫌なものです。
人間の肉体は「地水火風」の四つの要素で成り立っていると言われています。「地」とは骨とか肉をつくっている硬いもの、「水」は水分で「火」は体温やエネルギー、「風」は呼吸です。要するに四大とは肉体の事なのです。
ところがお大師さまは『病気と言うものは、四大の調子が悪くなる事だけが原因ではない』と 『鬼と業も共に原因となるのだ』とおっしゃっているのです。鬼というのは、心が鬼になることで、鬼の心を持つことです。鬼の心とは、例えば「嫉妬に狂った心」「恨みや憎悪に満ちた心」「残忍や残虐な心」などです。よく夜中に悪い夢をみて金縛りにあったり、恐ろしいものに追いかけられ、逃げようとしても手も足も動かず、声も出ないで脂汗を流す、また狐が乗り移ったように奇妙な事を言ったりする事があります。こんな心になるのは、心が鬼の病にかかった証拠です。
次に業というのは、人間生活の積み重ねの事を言います。毎日の行いを「行」といいますが、その積み重ねを「業」と言います。行いには「善行=ぜんぎょう」と「悪行=あくぎょう」があります。善い行いを続けていれば『善業』となり悪い行いを続けていれば『悪業』となります。清潔で規則正しい生活をしていれば病気になりませんが、自堕落で不摂生な生活をしていれば病気になるのは当たり前なのです。
お大師さまはその治療法について、こうおっしゃっています。
◎『四大の不調を治すには医者に見せて薬を呑むのが1番よい。鬼にたたられた病のときは陀羅尼(真言のこと)を唱えて祈祷するに限る、
悪業による病を取り除くには、懺悔をして過去の過ちを悔い改めねば治らぬ』医者が治せるのは身病だけで、鬼病や業病は懺悔祈祷が治療法なのですね。
南無大師遍照金剛